守り、尊び、伝えていくべき信念。「愛の会」イズムとは。
私は、陶芸家の両親のもとに生まれました。父は初代であり、私は一人っ子でしたので、当然そういった教育は受けてきましたが、教員になりたくて大学に行き、そこで児童福祉を学びました。卒業後は、ちょうどバブルという時期もあり、東京に出てサラリーマンをやる方が魅力に感じ、営業マンとして働きました。
そんな営業マン時代のことです。ふと、街角で車椅子を押している若い男性を見かけました。それを見て、素直に「カッコいいな」と思ったんです。華やかなものに囲まれ、他人を蹴落としながら生きていく世界で生きる私よりも、茶色い髪でニコニコしながらおばあちゃんの車椅子を押している彼の方が、よほどカッコよく見えたんです。その瞬間、私が本当にやりたかったことに気がつきました。東京に出て、色々なものを見てきたからこその発見だったと思います。
それからすぐに仕事を辞め、いくつかの老人ホームに勤めた後、木村理事長とお会いし「ケアマネージャーとしてやってみないか」とお話をいただいたのがハートピアグループとの最初の出会いです。
私は長く、まだまだ未成熟だった福祉の現場も数多く見てきております。いわゆる介護保険前、介護保険後、と呼ばれるものですね。両者の違いは大きかったと思います。今でこそ当たり前ですが、当時は個別ケアという発想自体がなく、すべて時間割で管理されていました。その頃から、お年寄りの自由な生活を奪うようなやり方はどうなのかと、ずっと疑問に抱き続けていたのです。
また、もう一つ当時を象徴するエピソードがあります。私が最初にお世話になっていた老人ホームでの話なのですが、そこの職員は「笑ってはいけない」という決まりになっていました。命をお預かりしている立場なのだから緊張感を持ってやりなさい、と。
そのような主張は最もですが、私はそうではないと考えます。私たちは、決して機械や人形を相手にしているのではありません。感情のある人間と、日々触れ合いながら生きているのです。笑顔は、人と人を繋ぐ大切なコミュニケーション手段です。笑いの失われた日常は、まさに枯れ果てた砂漠のようなもの。穏やかに流れる時間と、明るい笑顔。人の営みには、それらが必要不可欠なのだと私は考えます。
ハートピアグループと、今まで経験してきた福祉法人との一番の違いは、損得勘定で動いているかどうかという点だと思います。
例えば、所属する母体によっては、ガソリン代をかけるな、人の病院まで付き添うな、などと叱られることあるのですが、うちは「皆様が喜んでくれるならいいじゃないか」と快く背中を押してくれるのです。
これは、まさに木村理事長がおっしゃる「近きもの喜べば遠きもの来たらん」を実践している証明だと言えるでしょう。私は、これを「愛の会イズム」と呼んでいます。「愛の会イズム」に境界線はありません。どこまでも続く澄んだ青空のように、私たちも思いやりや真心に限界を作ることは決していたしません。
この仕事を続けていく中で、嬉しかったことや印象的だったことは数多くあります。例えば、ご入居者様のなかに認知症の方がおられるのですが、私が話しかけますと、声を出して笑ってくださったり、こちらの言葉に反応してくれるんです。まだまだ未熟な私ですが、そういったお年寄りの方々に喜んでいただけた瞬間は、本当にこの仕事をやっていてよかったと感じます。
また、入居されているご家族の方に「何回も足を運ぶのは、施設長さんが『ガハハ』って笑うでしょう。それが見られるから嬉しくて来るんですよ」とおっしゃっていただけたことも印象深いエピソードです。「笑うと、こんなにも喜んでいただけるんだ」と改めて笑顔の大切さと偉大さを知った出来事ですね。
現在、私は新しく開設予定の施設である、「小美玉敬愛の杜」の取りまとめを担当しております。愛の会、ハートピアグループとしての初めての老人保健施設であり、正直プレッシャーはありますが、私どもにとって老人保健施設の役割というのはとても重要な意味があります。今まで病状が悪化し、他法人の施設に移らなければならなかった方も、最後まで私どものグループで対応したい。それは木村理事長の悲願であり、私たち全員の願いでもあるのです。
職員一同、このハートピアグループで責任を持って皆さまを支えられるという喜びと希望、そして熱意に満ちあふれております。
もちろん私たちのグループの利用者様だけを受け入れるわけではございません。今まで以上に老人保健施設というのは、柔軟性を持ってやらなければいけないのだと思います。「この人は重い病気だからだめ」、「この人は認知症が強いからだめ」、と頭ごなしにお断りするのではなく、まずやってみましょう、と。そういった揺るぎない軸を胸に、粉骨砕身、取り組んでいきたいと思っております。
「やっぱりハートピアグループだね」と喜んでいただける経営。
「愛の会イズム」を、私たちはこれからも守り続けていきます。
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